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防災コラム「透明なお守り」Vol.2

阪神淡路大震災1.17オブジェ

身近な日常の気になるコト・ヒト・モノをテーマに綴るスタッフブログより、新連載スタートした防災コラム(長編)「透明なお守り」第二話をお届けいたします。

地球、家族、友だち、わたし、みんなにやさしい未来を描き、自然との共存を考えた時、わたしたちが暮らしの中で身近に対応できる必要な知識やリアルな情報が、この防災コラムにはぎっしり詰まっています。今回も読み応えたっぷりですので、ぜひ最後までご覧くださいね!

プロローグ

立春も過ぎたこの季節、日本では雪かきが欠かせない地域がある一方、沖縄では寒緋桜が次々に開花し、1月下旬から各地で開催される「桜まつり」で一足早い春を楽しむ方もいるでしょう。徐々にルールや規制が緩やかになる中で迎えるコロナ禍4度目の春、長らくマスクで隠されてきた”満面の笑顔”を今年は互いに見せ合える機会が増えるといいですね。

雪の中の花

ところで、先月の初回コラムはいかがでしたか?
思いもよらぬ長編作で驚いた方も多かったのではないでしょうか。

防災・災害、特に人の心や目に見えない大切なものについて、多くの人に伝えたいことが山ほどあるゆえ、どうしても詰め込んでしまうようです。

ですから、このコラムは1ヶ月間かけてあなたのテンポでゆっくりと読み進めてください。そして、少しでも普段とは違う視点から災害について考えていただくきっかけになれば幸いです。

さて、先月は大寒波により全国各地で雪やその影響による被害が1週間以上続きました。あなたの地域は大丈夫でしたか?長時間停電、車や電車の立ち往生なども多く発生し、実際に防災グッズを活用したり、見直す機会になった方も多いかと思います。

また、2月6日にはトルコ・シリアでM7.8の非常に大きな地震が発生しました。奪われた命は、既に4万1千人以上(2/15現在)となり、被害の範囲も犠牲者数も東日本大震災を超え、新たな自然災害が引き起こす悲しみが増えました。

平和な時間を突然奪っていくのが “もしも” の災害

たとえ事前に備えていても想定を簡単に超えてくるのが災害時の “もしも”

災害は場所を選ばず、時間を選ばず、事情も何もかもを無視して、ある日突然襲ってくるものです。

あなたの笑顔が少しでも悲しみに暮れることがないように、今回もこのコラムを通じて“透明なお守り袋”の中に、ひとつ新しい心の安心材料となる知識を入れていただければと思います。

それでは、“透明なお守り Vol.2”
今月もゆっくり、じっくり、どうぞご覧ください。

透明なお守り

神々しい杉の木

過去の災害を正しく知り、次の災害へ備えることで守られる命・生活・未来・・・

防災・減災には、2つの【袋】が必要です

1つ目は、災害避難グッズを詰め込んだ【防災袋】

2つ目は、防災・災害の知識や情報、考え方や向き合い方など「心の準備」を詰め込んだ【透明なお守り袋】
防災・災害の基礎知識はもちろん、過去の被災地や被災者から学ぶ “あの日” と被災後から今日までの時間経過の中でこそ見えてくる、現地や当事者のリアルな経験や心の声(本音)を少しでも理解することで、あなたの“もしも”の時の行動や未来もきっと変わっていくことでしょう。

災害は常に「想定外」

幅広い視点や立場から得られる情報や考え方を日頃から学ぶことは、大切な命を守るだけでなく、不安や冷静さを失った災害現場・被災地で、少しでも安全で安心な避難生活を送るためにも非常に重要なこと。

このコラムでは「形ある防災グッズ」から「形なき防災グッズ」まで幅広く情報としてお届けします。必要なグッズは人それぞれ違います。

アナタにとって最適な“お守り”を準備し、“もしも”に備えてくださいね。

心の復興

1月17日

あれから28年を迎える阪神淡路大震災の追悼イベント「1・17のつどい」に参加するため1年ぶりに東遊園地へ足を運びました。

1.17のつどい

今年の灯籠で作る言葉は【むすぶ】

「人と人、場所と場所を結び、みんなで一緒に震災を伝えていこう」という願いが込められた言葉。

この数年、コロナ禍で分断されたものは多いですが、震災経験者と知らない世代、被災者とそれを支える人とを改めて結び、過去と現在と未来の想いも結び繋げていく場所に今年も多くの方が集いました。

黙祷の時間・・・シーンと静まり返った会場のあちこちからは啜り泣きが聞こえてきます。

 ただいま

 元気ですか

 ありがとう

 ごめんね

 会いたい

 見守ってね

 忘れてないよ

 伝え続けるね

 頑張るね

 生きるよ・・・

もう二度と会えない大切な人を想い、あの日を思い出し、各々が伝えたい言葉を心の中で静かに呟く時間。そして溢れ出した言葉にならない感情が会場の空気を包み込み、異次元の空間へと変わります。

時間の経過によってどんどん色褪せ進む、震災のさまざまな風化の流れに唯一逆らい、年月を重ねるほどに今も積もり続ける被災者の強い想いがギュッと集まり、黙祷の時間は一瞬にして“あの日”の記憶を甦らせる…。

1.17のつどい

毎年、その何とも言えない圧倒的な雰囲気にのまれ、心がものすごく苦しくなります。
けれど、その心の声が詰まった空気に触れることで、多くの命や未来を奪った事実、震災の恐ろしさ、防災の大切さ、そしてあの日の苦しみや悲しみとともに今を生きている人がこんなにも大勢いるのだという現実を改めて知り、心に刻む大切な時間であると考えています。

あの日から28年経った神戸の街並みに被災した面影はありません。

けれど

28年経っても変わらないものがある。

28年経つことでより重みを増すものがある。

・・・いかがですか?

「1.17」という震災を教科書で学ぶ世代はもちろん、被災地へ足を運ぶ機会や ”震災後” に触れることがない方々に、少しでも「阪神淡路大震災」や「被災地」「被災者」の「当時と今」を想像していただければと願いを込めて、28年を迎えた被災地・神戸の様子を綴りました。

会場には、多くの若い方たちの姿もあります。あの日の犠牲となった方たちの子どもや孫かもしれません。若しくは、震災を知らないからこそ、学びたい・伝えたいと考えて足を運んでいる人たちもいるでしょう。

今、自分にできることを考えながら、「伝承のともしび」が消えないよう心から願うばかりです。

1.17のつどい竹灯籠

心の復興 (グリーフケア)

災害が壊してしまうもの・・・

「街」や「建物」そして「心」 

大きな震災後にすべきことは「街の復興」とともに「心の復興」もあることを忘れてはいけません。

被災者にささぐ紙灯籠

「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」「心のケア」などという言葉は、震災に限らず、大きな事故や事件が発生した際、今ではよく耳にしますが、これらは1.17の震災を機に注目され、広く認知されるようになりました。

壊れたものを再建・修復することが“モノ” よりずっと難しい “ココロ”

心のどこに深い傷を負いその人を苦しめているのか?

何がその心の傷を少しでも癒してくれるのか?

目に見えない「心の傷」 を癒すということは非常に難しく、また自覚症状がないケースもあるからこそ、その対応はさらに複雑だと言われますが、感情・心をもった私たち人間にとって、身体に負う怪我や病気と同じくらい、いえ、それ以上に一番大切にし守らなければいけないものだと考えます。

ところで、あなたは【グリーフケア】という言葉を聞いたことがありますか?

グリーフとは「深い悲しみ」「悲嘆」などと日本語訳される言葉で、死別や離別など大切な存在を失った時の喪失感によって引き起こされる心身の不調をいいます。

深い悲しみの中に閉じこもり、心に蓋をしてしまう人もあれば、悲しみながらも同時に現実を受け入れ立ち直ろうとする力が働き、その間で揺れ動くことによって心身をすり減らしてしまうケースもあります。そんな 「グリーフ」 を抱えている人の心に静かに寄り添い支援することこそが【グリーフケア】です。

人の心は見えないから、相手の気持ちを想像し寄り添うことが何より大切。

例えば、災害時に遭った恐怖や突然の別れ、そして長引く避難所暮らしによって被災者の心の中は、喪失感・不安・悲しみのほか、多くの我慢を強いられ満足な生活が送れないことに対する、不満・苛立ち・ストレスも溜まる一方です。

そんな被災者の方たちの心情や、感情のコントロールが困難となってしまう様子は、多くの方が想像できるかと思います。

けれど、あともう一歩踏み込んで、“大丈夫” に見える人の心の中も想像してみてください。

「大丈夫!自分はまだ頑張れる!」 

「親が子どもの前で泣いてなんていられない」 

「自分だけでも笑って周囲を元気づけなければ!」 

・・・誰だって不安で仕方がないはずのなのに、それでも希望を捨てず、いち早く気持ちを切り替え、周囲に心配かけまいと無理に笑顔を作り、平気なふりをして、復旧・復興に向けて自らが旗振り役を引き受け頑張る人たちがいます。

災害直後の被災地は、想像以上に助けの手は届きません。本来、大きな被害に遭い、多くのものを失った被災者は、誰かの力を借りて助けてもらい、守られるべき人、支援されるはずですが、現実は自身のことを顧みず「自分より大変な誰かのため」に頑張っていることが多いのです。

助けてくれる人がいないなら、救援物資が届かないなら、命を繋ぐため、大切な人を守るため、とにかくまずは自分たちが頑張るしかない。

「究極の選択」を迫られ、たくさんのことを「諦め」、自らを「納得させ」、必死に「生きることだけを考え」 毎日を過ごす場所、それが大災害後に待っている被災地の姿であり、それが被災者の心を追い詰めていくことにもなっています。

辛いのに辛い、悲しいのに悲しい、泣きたいのに泣けなかった数ヶ月・数年を過ごすことにより、グリーフが時間差で訪れるケースも多々あります。災害発生当時だけが、被災者の気持ちが苦しいピークとは限らないのです。

世間で報道される被災地の様子は氷山の一角でしかなく、知られていないことは沢山あります。風評被害や差別・偏見に繋がる恐れのあるものは、報道を見合わせることもあります。するとそれは同時に、当事者やそれに関わる限られた人だけが知るものとなります。被災者の数だけ被災体験があり、被害や事情によって生まれる苦労や悲しみ、そして災害後にも被災者それぞれの人生が続いているのです。

次の災害が来る前に、少しでも多くの過去の災害を知り、同時に被災者の心を知ることは、あなたが今後、被災者・支援者どちらの立場になったとしても必ず役に立つはずです。

被災者の気持ちに配慮できる言動が、被災によってできた傷口をむやみ広げることなく、思いやりや優しさで苦労を一緒に乗り越え、心の負担を軽減することに繋がるかもしれません。

「グリーフ」 や「グリーフケア」という存在や概念は、もっと社会に周知され理解を深めることが必要です。さらに、ここで重要なことは「グリーフ」 は「誰かに打ち明けられるとは限らない」ということです。さまざまな事情で心に抱えた悲しみを誰かに伝えることすらできず苦しんでいる人たちがいます。

そして、そんな誰にも打ち明けられない声なき声を受け止める場所、たった1人で抱えている心の傷をほんの少しでも癒せるようにと願い作られた場所があることをあなたはご存知ですか?

例えば、東日本大震災の被災地にある「風の電話」や「漂流ポスト」はこれまで絵本や映画などでも取り上げられましたので、ご存知の方もいるのではないでしょうか?これらは「心の中に閉じ込めた想いを静かに言葉にできる場所」です。

その他、大切な人の命がこの世に存在した証を残すため、思い出を色褪せさせないため、想いや記憶を形として残すため…絵本など作品を制作する方もいます。グリーフ・グリーフケア・心の復興について、少しでも多くの方に関心を持っていただき、広く認知されたらと思います。

風の電話

風の電話

岩手県上閉伊郡大槌町浪板9-36-9
「ベルガーディア鯨山」内

https://bell-gardia.jp/guide/kaze-no-denwa/

漂流ポスト

漂流ポスト

岩手県陸前高田市広田町赤坂角地159-2
「漂流ポスト」(手紙宛先)

ameblo.jp/hirota-morinokoya/entry-12668322034.html

私たち人間は、想像できる生き物です。いつ起きるか分からない災害に対して、どれだけ多くのことを想像できるかということは「想定内の幅を広げる」ことに通じます。

互いに広い視点で物事を想像できるよう心の準備をすることができれば、きっと災害時だって、被災者も支援者もみんなが互いを思いやれる中で「街の復興」そして「心の復興」ができるのではないでしょうか?

被災地で育った子どもたち ”震災の子”

竹灯籠

普段、「被災者」という言葉で一括りにされる被災された方たちですが、その中には当然子どもたちの存在もあります。この「被災した子どもたち」についても世間に知って頂きたいことがたくさんあります。

「お父さんが必死に守ってくれた命だから」 

「お母さんを不安にさせてはいけない」 

「僕はお兄ちゃんだから」 

「私はもう中学生だから」 

毎日を生きるのに誰もが必死となっている被災地には、四六時中ピリピリとした空気が漂い、それを子ども達は、大人の表情・言動から敏感に察知しています。本当は不安なのに、寂しいのに、泣きたいのに、甘えたいのに、無邪気な子どもらしい姿を演じ、物分かりの良いフリをして、足手まといにならないように、自分にできることを探し、大人たちを必死に支える被災地の子どもたち。

大きな被害が遭った場所では、神戸や東北の地震でも見られるように、避難所暮らしは数年単位の長期にわたるケースもあり、想定外の人生を歩むことになります。

子どもたちの場合、学校生活が中断したり、進学を断念したり、進路変更を余儀なくされることも少なくありません。

まさに、現在のコロナ禍と同じように「貴重な子ども時代を奪われ人生が変わる」ということです。

幼児・小学校・中学校・高校・大学・・・生まれてから約20年という時間は、長い人生の中でも代わりがきかない、取り返せない貴重な時間です。

もちろん、大人になってからでも学生生活はできるし、様々な学びの場に身を置くこともできます。

けれど、多くの同世代に囲まれて、互いにまだまだ未熟で知識も経験も少なく、それゆえ自由な発想を豊富に持ち合わせる者同士が、失敗・後悔・衝突を繰り返し、悩みながら、励ましながら、刺激し合い、成長を促す時間はきっと、人生でこの「子ども時代・青春時代」と呼ばれる時期にしかありません。大人でも辛い大災害という経験は、未成年にとって受け入れ難いものとなるのは間違いありません。

震災から28年経った神戸では、あの頃の子供たちは今、働き盛りの世代として社会で活躍しています。まもなく震災から12年を迎える東北でも、当時の子どもたちの半数以上が既に二十歳を超えています。

あなたの職場や地域にも、子ども時代に震災を経験した方や心にグリーフを抱えた人が、すぐ側にいるのかもしれません。

子ども時代に被災するということは、大人にはない特有の形で強いダメージを負っていることを理解し、避難所暮らしや復興期だけでなく復興後、彼らが大人になったあともなお、引き続きケアを必要とすることがあるのです。何が引き金となって塞がったと思われた傷口のかさぶたが取れてしまうかは分からない。人の心は、時に強いけれど、時に脆いものであることを決して忘れてはいけないのです。

慰霊灯籠

今から3年前、神戸の震災から25年を迎えた1月17日にNHKテレビの震災特番を見ました。番組では、震災当時に小中学生(6〜15歳)だった方へのアンケート調査を実施しその結果が紹介されていました。

そこで印象的だったのが「震災体験を前向きに捉えている」と答えた方が約6割もいたことです。

また、家族を失ったり、自宅が全壊するなど、被災の程度が高いほど、自分の生きていることの使命は何かを考える傾向にあり、そこには当時、家族以外にも支えてくれた大人(先生や近所の人たち)の存在が大きく影響していると分析されていました。そして、それは未来にも影響を及ぼし「自分も誰かを助ける職業につきたい」(約6割)という回答にも繋がっていきます。

因みに、先日教育関係の民間企業が行った「中高生の将来の夢や職業に関するアンケート調査」でも、今回は男女ともに1位は「教師・教員・大学教授」、次いで「看護師・医者・学者」などがベスト3を占めたと発表されました。コロナ禍でも日常生活を支えるために奮闘する身近な大人たちの姿を見て働きがいややり甲斐のある仕事への関心が高まったと分析されています。

そして、被災体験を打ち明けた(約7割)の人の方が、前向きに捉えていることも分析されています。話をした相手は、友人との回答が圧倒的多く、これは本来一番身近で頼れるはずの家族には、これ以上悲しい思いをさせたくないという子どもなりの気遣いの表れと考えられています。

一方で、「思い出したくない・触れてほしくない」と回答した方も約2割います。

25年(アンケート実施当時)経っても、5人に1人が震災によって負った傷が癒えることなく、受け入れられない記憶や体験となっている人がいるという事実を私たちは理解し、「災害とその後」について考える時に必ず配慮することを忘れてはいけません。

「災害と子どもとその未来」

被災者の心に寄り添うということは、深く考えれば考えるほど難しく、それでもなお、考えるべきことだと思います。

1.17のつどい シャボン玉

エピローグ

今回は、神戸淡路大震災「1・17のつどい」のレポートと「心の復興」についてお届けしました。

キャンドル

“街の復興” は、国や行政によって物理的に復興させ、そして住民たちがみんなで一緒に地域コミュニティを改めて再建していくものです。少子化が進み、住民同志の交流が少ない現代では、なかなか難しい課題も多いでしょうが、街づくりは目に見える部分が多いだけに、手応えを感じながらそれを励みに頑張ることもできます。

けれど・・・

“心の復興”は、誰の目にも見えません。ともすれば、本人すら自らの心の状況を把握できないことがあるくらいです。けれど、人が健康に生きていくためには、心が元気でなければいけません。

では、そのためには何が最も必要なのか?

それは、「心の傷を癒すことができる人」を1人でも多く増やすことではないでしょうか?

傷ついた心は人それぞれに違います。風に揺られ消えそうになっている心の灯り一つ一つにそっと寄り添い、静かに見守ることが何より大切。

災害の記憶を共有すること、心の痛みを分け合うこと、言葉にすること、話をきくこと…

それは、コロナ禍を生きる私たちにとっても参考にすべきことが多いのではないでしょうか?

このコラムの執筆中に発生したトルコ・シリア大地震

校正の作業中も絶え間なく更新される犠牲者の数や被災地の様子を見聞きするたび、心がどんどん苦しくなっていくのを覚えます。過去にあった災害とそれによって引き起こされる被災者の心についてを綴っていたはずが、奇しくもそれらが全て、今まさに現実のものになっていくことに悲しみを感じずにはいられません。

崩れた建物の下から助けを求める声がするのに、瓦礫を動かす重機がない、人の手も足りない、結果、目の前にある命を助けることができない。そして、せっかく救われた命もまた救助や救援が追いつかず、食料・医療をはじめ、生きていく上で最低不可欠な環境が得られぬまま、再び生死を彷徨う人たちが、この瞬間もたくさんいるのです。

今は一つでも多くの命が助かることを祈り、そして1日も早い街の復興・心の復興を心から願うばかりです。

そして同時に、この地震によって再び心がつらくなっている過去の被災者の皆さんのことも気がかりです。どうか「しんどい」と一言伝えられる人が、すぐ側にいてくれますように。

神戸タワー

前回の【知る】のテーマでもお伝えしましたが、「防災・災害」を学ぶときに大切なのは、どんなグッズを備え、どのように避難し、どう命や生活を守るか・・・といったモノや知識だけでなく、広い視点や立場から「災害」や「被災」を捉え考えることにより、災害時の心への影響、そして今回のテーマ【心の復興】についての理解を深めることに繋がるかと思います。

災害は、発生して終わるのではありません。

そこから、復興までの長い道のりが始まり、その先の未来が続くのです。

さて、来月は3.11東日本大震災発生から12年を迎えます。

地震発生時刻 14時46分

今年も被災地で過ごす予定ですので、次回はあの日から12年を迎えた”東北の今”をお届けできればと思います。

今月もあなたの透明なお守りに、また一つ大切なものが増えていたら嬉しいです。

それではまた・・・。

防災のあたらしいカタチ提案

見える防災グッズ vol.2

ー トイレ ー

近年、その重要性がようやく広く知られるようになってきた防災グッズ「非常用トイレ」

災害から何とか守ることができたその命を、明日へと繋いで行くためには食事はもちろん必要。
けれどそれで終わりではありません。
どんな生き物も栄養を体内に取り込んだあと、不要なものは老廃物として体外へ排出されます。

そう「排泄」という行動が必ずあるのです。

どんなに非常時であっても、
たとえ食事をまともに摂ることができなくても、
人は1日に数回は排泄行為をするのです。
無理をして我慢をすれば、体調を崩し健康被害や災害関連死に繋がる恐れもある大切な生活行動。
人間の生理現象である排泄は、災害時でも待ってはくれません。

ということで・・・今回は「トイレ」をピックアップしてご紹介します!

アートトワレ

◆トイレの種類「携帯トイレ」と「簡易トイレ」

災害時や野外用トイレとして販売されているトイレをよく見ると
「携帯トイレ」と「簡易トイレ」の大きく分けて二つの種類があることをご存知ですか?

えっ!同じじゃないの?!何が違うの?・・・と思った方、多いのではないでしょうか?

一言で言えば、「便座」の有無です。
ただ、幾つか注意すべきこともありますので、 少し情報をまとめておきましょう!

「携帯トイレ」= 便座ナシ = 袋と凝固剤能

  • それだけですぐ使えるもの
  • 自宅の便座などにセットして使うもの
  • レジ袋などを使うことを前提にした凝固剤だけのもの
  • 簡易の段ボール枠(小さなおまるようにして使う)がついているもの

「簡易トイレ」= 便座 + 携帯トイレ 又は、 便座のみ

  • 多くは「便座、袋、凝固剤」がセットになっている(但し、便座だけのものもあるので要注意!)
  • 災害時の使用を想定した防災グッズとして準備する場合、
    繰り返し使用するため耐荷重や耐水性も重視
    (大人も安心して座れる丈夫さ、汚れが簡単に拭き取れる素材など)
  • 携帯トイレ(袋・凝固剤)がセットされていない場合もあるので注意

◆非常用トイレを選ぶ時のポイント

災害発生直後は、ゴミの収集も一時的に止まりますので、汚物の廃棄はすぐできるとは限りません。
避難生活をしている場所の一角に、回収が可能となるまでの間ずっと溜めておくことを想定しておくことが大切です。
袋は簡単に破れない材質や中身が見えない濃い色の方がおすすめです。
また、凝固剤も固まるスピードや量、そして凝固持続時間などにも注意しておきましょう。

安価なものは、袋や凝固剤の性能などが重視されていないことが多く、
異臭問題や感染症を引き起こし、身体への影響をもたらすこともありますので十分ご注意ください。
同時に、乳幼児や高齢者(要介護者)用のおむつなど、
排泄や衛生用品の備えについても、平常時から想定し準備が必要です。

◆機能に優れた2つの珍しいタイプの非常用トイレのご紹介

トイレを飾る?! 「アートトワレ」 

普段は、壁や棚にアートとして飾りつつ、いざとなったらトイレになる!
保管場所に困らず、そしていつでもすぐ使えるようにスタンバイしている携帯トイレ。

いざという時、慌てて避難袋からトイレを探し出すのではなく、
さりげなく “トイレにトイレを飾って”
断水しても普段通りトイレへ行ってセットすれば簡単に用を足すことが可能です。
また、各部屋にもアートとしてさりげなく(実は)トイレを飾ることで、
場所を取らずに長期間に備えたトイレを数多く保管できます。

アートトワレ
アートトワレ
アートトワレ


完全密閉個包装で感染予防!「ラップポン」

よくある携帯トイレは、排泄後に自分で袋を閉じる作業があるのですが、
ラップポンは手を汚さずに熱圧着で袋を完全密閉できる衛生的な簡易トイレ。
高機能フィルムを使用した袋を熱圧着で個包装するので、
中身も匂いも細菌も封じることができる衛生面で非常に優れたトイレです。
また、中には日頃から介護用品の一つとして使用できるものもあります。

ラップポン
ラップポン



◆ご存知ですか?災害時のトイレ問題

今は、災害時に住宅が大きな被害を受けていない場合、在宅避難も推奨される時代です。
もし断水になってしまうと、途端にトイレも水が流せず困ります。

また、多くの方は「トイレ問題」について「排泄」という部分だけを想像しているかと思いますが、
実はもっと多くの問題を含んでいることをあなたはご存知ですか?

○設置場所

多くの人が暮らす避難所では、毎日大量の排泄物がドンドン溜まっていく一方です。
そんな、汚くて臭くて不衛生なトイレは、当然なるべく生活空間(寝食する場所)から離れたところに設置されます。
例えば、小学校の避難所では、被災者が生活している体育館や校舎などから最も離れたグラウンドの片隅に、臨時の公衆トイレを設置することになるでしょう。しかし、これでは雨の時はもちろん、真夏や真冬など季節の厳しいとき、また小さな子供や高齢者にとって、トイレに行くだけでもひと仕事です。

◯体内の水分不足

もし、前述の不便さを理由に、少しでもトイレにいく回数を減らそうと水分補給を控えたら・・・今度はたちまち、脱水症状・膀胱炎や、血栓による循環不全で脳梗塞・心筋梗塞・エコノミー症候群など、今度はさまざまな健康障害となるリスク要因が高まることになります。

◯感染症

被災地では排泄後の汚物の回収や処理もなかなか捗らず、日々増え続ける排泄物は時間とともに、腐敗し悪臭を漂わせるだけでなく、害虫も寄ってきて、菌が繁殖すれば衛生状態も悪化します。
結果、ノロウィルスなどの感染症による健康への影響も心配されます。

いかがでしたか?
災害時の「トイレ」(排泄行為)は、想像以上に真剣に考えておくべきことだとお分かりいただけけましか?
防災グッズの準備の際には、トイレをどうぞお忘れなきように・・・。

そして、最後に一つご提案です。

「非常用トイレ」を平常時に一度使ってみてください。

非常時は、言葉通り「非常事態の時」です。
誤った使用方法で、1回分のトイレを無駄にしてしまわないように、
そして、手際良く衛生的に使用できるために、“お試し”はとても大切です。

昨年9月に枚方ビオルネで開催した体験型防災イベント「防災キャンプ」の際、トイレ実用体験ブースも設置しました。
屋外会場の一角に、まるで公衆トイレのように「トイレ」の文字と「男性/女性」マークをつけて2台設置したのですが、これがなかなかの好評ぶりでした。

もしあなたがお試しする時は、自宅のトイレのほか家の浴室で体験するのもオススメです。
万が一、粗相をしても大丈夫ですから!

防災グッズは、「日頃から使える」ということも大切なポイントです。

「災害時 = 非常時 = パニック状態 = 冷静な判断が難しい」

そんな状況では、日頃使っていない災害グッズを上手に使いこなせないかもしれません。
せっかく準備した防災グッズを本当の意味で「役立つグッズ」にするため
どうぞ平常時に色々とお試しください!

日の当たる部屋

筆者プロフィール

日経新聞まちかど人間録

筆者 プロフィール

石元 彩

西宮市の短大卒業時に阪神淡路大震災を経験し学生生活を突然打ち切られたまま社会人となる。

その後、1.17の震災を機に誕生したラジオ局「FMひらかた」に開局から閉局まで25年間携わり、後半11年間は東日本大震災の復興支援や情報を毎週発信するほか、常に社会に埋もれそうな小さな声やマイノリティの存在にスポットを当て、心に寄り添う言葉にこだわり番組を制作。ギャラクシー賞選奨2作品、奨励賞1作品受賞。


このコラムでは、これまで得た経験・知識・人脈、マスメディアの世界だからこそ触れられたもの全てを活かしながら、防災や災害、被災地の現状や被災者の声、さらには、その先に繋がる”生きるヒント”にもなり得るものを”見えないお守り”と称してさまざまな視点からお伝えできればと思います。

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