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防災コラム「透明なお守り」Vol.6

プロローグ

梅雨の季節となりました。

今年は久々に5月末にほとんどの地域が梅雨入りし、湿度も気温も夏に向けてドンドン上昇する中、熱中症対策など体調管理には気をつけてお過ごしですか?

本格的な暑さ到来前の今こそ「まだ大丈夫」と注意に油断が生じ、気温や湿度の変化に慣れきっていない身体のケアを怠りやすいと言われています。

災害も健康も思わぬ注意の見落としが、大切な命に関わることもありますので、十分気をつけたいものですね。

 「災害は忘れたころにやってくる」

 「災害はどこにいてもやってくる」

 「災害はいつか必ずやってくる」

決して不安を煽るわけではありません。

けれど、過去はもちろん、現在も、自然災害はいつもどこかで発生し、そして私たちの命や生活を奪い、脅かし、心に深い悲しみや傷跡を残していきます。

 「自然の前で人間は無力」

 「災害は人間の力では止められない」

けれど、その災害が発生した時、少しでも奪われ失うものが減るようすること。悲しみや傷を浅くさせること。

それら「減災」することは可能であり、それこそが「防災」です。

さて、今月は防災を「心理学」の視点から考えたいと思います。

そして後半では、東北被災地レポート「岩手県・後編(陸前高田市)」をお届けします。

今回もいつものように、1ヶ月かけてゆっくり、のんびり、少しずつ、防災や災害についての知識を理解し、あなたの心の中にある透明なお守り袋に、見えない防災グッズの一つとして大切に入れてくださいね。

透明なお守り

過去の災害を正しく知り、次の災害へ備えることで守られる命・生活・未来・・・

防災・減災には、2つの【袋】が必要です。
1つ目は、災害避難グッズを詰め込んだ【防災袋】2つ目は、防災・災害の知識や情報、考え方や向き合い方など「心の準備」を詰め込んだ【透明なお守り袋】

防災・災害に関する基礎知識はもちろん、過去の被災地や被災者から学ぶ “あの日” と 被災後から今日までの時間経過の中でこそ見えてくる現地や当事者の経験や心の声(本音)を少しでも理解することで、あなたの“もしも”の時の行動や未来もきっと変わっていくことでしょう。

「災害は常に想定外」幅広い視点や立場から得られる情報や考え方を日頃から学ぶことは、大切な命を守るだけでなく、不安や冷静さを失 った災害現場・被災地で、少しでも安全で安心な避難生活を送るためにも非常に重要なこと。

このコラムでは、「形ある防災グッズ」から「形なき防災グッズ」まで幅広い情報をお届けします。 必要な防災グッズや知識は人それぞれ違います。アナタにとって最適な“お守り”を準備し、“もしも”に備えて頂ければと思います。

防災と心理

人は常々「大丈夫」という言葉に支えられて生きています。

この言葉に安心感を与えられたり、心が慰められたり救われる場面も多々あるかと思います。

けれどこの「大丈夫」が、時に命取りとなることもあることを改めて知っていただきたいと思います。

安全神話

突然ですが質問です。

5年前の6月といえば、日本でどんな災害があったか覚えていますか?

「大阪北部地震」

  • 2018年6月18日午前7時58分
  • 枚方市・大阪市北区・高槻市・茨木市・箕面市で震度6弱を観測
  • 震源は大阪府北部
  • マグニチュード6.1
  • 地震の深さ13キロ

1995年の阪神淡路大震災の際、最大震度4だった大阪府では、この日「震度6弱」を観測。大阪府において「気象庁が把握する1923年以来、観測史上初の記録」だと報道されました。

「大阪は大丈夫」

あの朝、多くの人が信じていた【安全神話】が崩れました。

出勤や登校時間と重なる朝の慌ただしい瞬間を突然襲った大きな揺れと繰り返される余震は、それまでずっと「大丈夫」だと思っていた多くの人にとって、より強く恐怖や不安を感じたことかと思います。

そんなあの日から5年が経った今。

どれだけの人がその教訓を活かし、日々災害への備えをしているのでしょうか?

大阪北部地震では6名の方が犠牲者となりました。その他、多くの建物損壊がありましたが、地震直後は一部停電していた地域も発生から約2時間半後には全て復旧、電話回線も正午には通話制限を解除、ガスや鉄道も安全確認ができたところから供給や運転を再開するなど、そのほとんどが当日のうちに日常へと戻り、ライフラインが完全に麻痺することはありませんでした。

大災害でよく耳にする「壊滅的で甚大な被害」を免れたのです。

ただそれは、残念ながらこの経験こそが心のどこかにあった「やっぱり大阪は大丈夫」という安全神話を助長させてしまうことに繋がってしまいました。

「バイアス」とは?

続いて、もうひとつ質問です。

あなたは「バイアス」という言葉を聞いたことはありますか?

バイアスとは、心理学用語で「先入観」「偏見」などを指す言葉です。防災・災害を語る場面では、「思い込み」という表現の方が理解しやすいかもしれません。

ここからは、バイアスの中でも、防災に最も関係する3つをご紹介しましょう。

■正常性バイアス

非常時に「大丈夫」「心配することはない」と気持ちを落ち着かせるために働くもので言い換えれば「心の安全装置」とも言えます。

人は、日々の変化に過剰に反応しすぎると、心は常に疲れてしまい、ストレスを抱え続けた状態となります。これでは毎日を生活するうえであまりにも負担が多くなり、生きること自体が大変です。

そこで、急なアクシデントに遭遇した時、人はこれまでの経験や固定概念によって「大丈夫」だと自身に思い込ませ、「”非常”を”正常”にすり替える」心理が働きます。

日頃の生活において、この心の機能は非常に大切な役割を果たしているということになります。ただ、これが災害の場面となると、危険を避けるタイミングを見失い、最悪の場合、命を落とすことにもなりかねません。

■同調性バイアス

集団の中にいると知らず知らずのうちに、他人と同じ行動をとってしまう心理状態を言います。特に日本人は、人の目を気にしがちと言われます。自分の主張を主張するより、周囲の言動に合わせることを選び、トラブルを避けようとします。

集団の中で個々の意見や考えを貫くことは、日常生活の場面では協調性がある行動であり、コミュニケーションが円滑になるなどプラスになる面があるのはもちろんです。

けれど災害時においては「直ちに逃げるべき!」という意見が少数であった場合、その緊急性や危険性を強く発言し避難することを周囲に提案しづらい状況となり、結果的に被害や犠牲者を多く出してしまう可能性があるでしょう。

■同化性バイアス

地震は突然やってきますが、そのあとに迫る津波は時間差で襲ってきます。

豪雨や長期間に渡る長雨が続けば、河川の水は少しずつじわじわと増え続けます。街中の目に見えない場所では排水機能が徐々に追いつかず、気づいた時には内水氾濫をするかもしれません。水分をたっぷり含んだ崖でも土砂災害の危機がじわじわと迫っている恐れがあります。

火事も同様。身近な場所で火災が発生したと情報を入手しても、火や煙を直接感じることができなければ危険を感じづらくなってしまいます。「火や煙はここまできていないから」と思い込み、じわじわ迫っている火災の規模や危険範囲を見誤って避難のタイミングを逃し命を落とすかもしれません。

これらは、迫ってくる危険に対し、その危険度の増しているさまや状況の変化が「じわじわ迫っている」からこそ、逆に実感として捉えにくく危険であることに気づきにくい状況であるということです。

災害時に「バイアス」は必要?不要?

日常生活を送る上で必要される「正常性バイアス」「同調性バイアス」ですが、これらを非常時に切り離すことはできるのでしょうか?

もっと言えば、災害時にこれらは全く不要なものなのでしょうか?

前述の通り、例えば「正常バイアス」は焦る気持ちを落ち着かせるため働く機能。ということは、パニックになりそうな心に対し「大丈夫」と諭すことは必要な機能だとも考えられます。心を冷静にさせて、正しい判断で避難行動へ移すことができるならば問題がないわけです。

そして「同調性バイアス」も「みんなが避難している」状況においては、もし楽観視している人がいたとしても、うまく避難誘導させることができるかもしれません。

「バイアス」とは、他の物事と同じく表裏一体の機能を果たすということです。

「バイアス」による防災術

ここで提案したいのが、そんな「バイアス」という人間心理を活用した防災です。

【Q】 もしも今、あなたがいる場所で非常ベルが鳴ったら?

(A)すぐに安全な場所を探して逃げる
(B)周囲に煙や出火した様子もないので誤作動やイタズラを疑う
(C)点検作業だろうと考える
(D)誰も逃げている様子がないのでひとまずここは安全だと思う

きっと多くの方は、B〜Dのいずれかの行動を選ぶのではないでしょうか?

非常ベルが鳴っても、火の手や煙が確認できない場所にいる場合、ほとんどの人が「様子見」の状況を選び、すぐに避難する人はほんの一握りでしょう。

けれど、この状況で次の声が聞こえてきたらどうでしょう?

「もうみんな避難していますよ!早く逃げて!」

この言葉が迷っている人を避難行動へと促す一言になります。

これは「同調性バイアス」をうまく利用した避難誘導方法です。

バイアスは、予期せぬことが起きた際、一定の冷静さを失わず行動し対処できるため、人が生きていく上で必要な「鈍感力」です。ある程度の変化や違和感は正常範囲内として処理できる心の仕組み。

その一方で、命を守るための危機感を鈍らせてしまうこともあります。

大切なのは、そんな人間の「心の仕組みや心理を防災知識の一つとして理解しておく」ことだということです。

3.11 あの日から12年後の景色  (岩手県・後編-1)

今年の 3 月10日から13 日までの4日間、東北の被災地へ行ってきました。

前回は「岩手県・前編」と題して大槌町(おおつちちょう)をご紹介しましたが、今回は岩手県の沿岸部最南端となる陸前 高田市(りくぜんたかたし)をお届けしたいと思います。

岩手県陸前高田市プロフィール

【まち】
岩手県南東端に位置しする人口は約 17,000 人(2023 年 3 月 1 日現在) 南側は宮城県気仙沼に隣接する三陸海岸の南の玄関口といわれ、7割を占める森林と広田湾に注ぐ気仙川により、 海・山・川の資源に恵まれ、地理的条件から四季を通じて比較的に温暖な地域です。

【観光】

樹齢 300 年を超える松が約7万本、およそ 2 キロにわたって白浜に茂る白砂青松の高田松原は「日本百景」に選ばれ、 また「名勝 高田松原」として国の指定文化財にも登録されるなど、景勝地として非常に高く評価され人気の観光地があ り、陸前高田市のシンボルです。

また、その美しい松原の正式名称は「高田松原防災林」といい、昔から度重なる津波の時には防潮林としての役割を果たしてきました。

【震災被害】
隣接する地域で測定された震度より、東日本大震災では、震度 6 弱を観測されたと推定され、岩手県内で被災した 12 市町村の中で、死者・関連死・行方不明者などが合計約 1,800 人に上り、最も被害が大きかった場所です。

地震による津波で、平野部に広がっていた市役所を含む街の中心部が壊滅し、全世帯のうち7割が被害を受け、また、 市内を走る JR 東日本大船渡線の 5 駅のうち、4駅と線路なども津波で流され「街ごと津波に流された」という表現で報 道されることが多かった地域の一つ。

その他、指定避難所の多くが天井付近まで水没し、そのうちの一つ市民体育館で生存できたのはわずか 3 人など、日 頃の訓練通りの避難では命を守ることができないほどの悲惨な被害を受けました。

観光名所だった高田松原の松は、その後「奇跡の一本松」と呼ばれる一本を残し、すべて津波によって破壊され、現在 は再生を目指し新たに4万本を植樹。

また、地殻変動による地盤沈下が著しく、最大で 84 センチと深刻な状態となっています。

高田松原津波復興祈念公園

「道の駅高田松原」「東日本大震災津波伝承館(いわて TSUNAMI メモリアル)」「タピック45(旧道の駅)」「高田松原国 営追悼・祈念施設」「奇跡の一本松」など、陸前高田で被災した記録と記憶を保存するため、さまざまな伝承施設や震災遺構などが設置された総面積 130 ヘクタールにも及ぶ広大な公園です。

岩手県内で最も甚大な被害を受けたこの地域は、復旧・復興には非常に多くの時間を必要としました。

市役所も震災から 10 年間もの間プレハブのままでした。「どこから手をつけて良いか分からない」ほどに、破壊された 街の再建の第一歩は、どこまでも広がり山積みになった漂流物の片付け、そして総延長約3キロにも及ぶ巨大ベントコンベアーを使用して山を切り崩した大量の土を運び出し、大規模な嵩上げや防潮堤の工事など、前代未聞の規模による再建事業を行い、ようやく「新しい街づくり」のスタート地点にたちました。

震災発生から 2年余りが過ぎ初めてこの地に足を踏み入れた時、360 度ぐるりと見回してもどこまでも何もない地面が広がるだけの景色に思わず言葉を失いました。1本通っている道路を走る車のほとんどが復興工事の大きなトラックばかり。そこに赤い看板だけが残されたセルフガソリンスタンド跡地。高くそびえ立つ看板上部(15.1 m)には、津波の爪痕がしっかり残されており、どれだけ大きな津波が襲ったかを無言で語っています。

以降も数年ごとに同じ場所を定点観察していると、ベルトコンベアーが張り巡らされていたり、嵩上げされた茶色の大地が姿を現したり・・・確かに、訪問するたび確実に現地の様子は変化していました。けれど、他の地域に比べて「土色の世界」からなかなか抜け出せない場所というのが個人的な印象的の場所です。

他の被災地が少しずつ新しい道路や建物が作られる中、陸前高田では、新たな街づくりをするための土台づくりを作るだけでも、本当に長期間を必要し、被災者も作業者にも忍耐を必要とする非常に大変な復興地です。

そして、最大12メートルにもなる嵩上げされた場所でようやく街づくりが着手され、震災から5年以上を経て、2016年にようやく商業施設など、新たな建物が誕生しました。そこからようやく、少しずつ目に見える街づくりが本格化していく中、2019年にオープンしたのが「高田松原復興祈念公園」です。

「東日本大震災津波伝承館(いわて TSUNAMI メモリアル)」には、当時の被害の甚大さを少しでも後世に伝えようと、被災物の実物展示のほか、岩手県各地の震災前と震災後の風景を紹介するとともいに、災害から学んだ教訓を発信している場所です。災害前と災害後の様子が並べられ、その被害の甚大さを伝えるとともに、その光景を目の当たりにした被災者の方の気持ちを想像すると胸が苦しくなります。

そして、

3月11日14時46分 一番海側・・・広田湾が見渡せる「海を望む場」で黙祷をしました。

大地を大きく揺らしたあの時間が近づくにつれ、数えきれない多くの人が続々と防潮堤を目指して集まり、海を静かに眺めたり、花や折り鶴や手紙をそっと献花台に添えててを合わせながら、各々が黙祷までの時間を過ごし、そして、サイレンの合図とともに黙祷・・・。

「あの日」を思い出し、突然の別れとなった大切な人の姿を瞼の裏に思い出しながら、声にならない対話があちこちでなされていました。

波の音と風の音、そして3月のとても穏やかで柔らかい日差しに包まれながら12年間の想いを持ち寄り過ごす特別な時間。 眼下には植樹された松の苗木が広がり、その向こうには青く穏やかな海が地平線まで続いていました。

自然の恵を私たちに与えてくれる海
大切なものを奪っていった海
自然の脅威を爪跡として残していった海
その壮大さや波の音で心に寄り添ってくれる海

被災者にとって「海」に対する思いや存在の意味はそれぞれです。

さて、ここまで「東北被災地レポート岩手県・後編」と題して陸前高田市をお届けしましたが、実は以前に一度簡単にご紹介したとおり、もう1箇所訪問しています。

ただ、今回も情報量が多くなってしまいましたので、次回「陸前高田市−2」としてお届けすることにいたします。

このレポートを読んで、少しでも「東北被災地の今」に関心を抱いた方は、是非ご自身でHPを検索するなどして、現地のことを知っていただければと思います。

あれから12年3ヶ月・・・復興したところがある一方で、まだまだ今、復興期真っ只中である地域もあるのが実情です。

しかし一方で、自然豊かで景色が素晴らしい場所や多く、海の幸・山の幸も美味しい素敵な魅力が多いのが東北被災地です。機会があれば是非足を運んでいただきたいと願います。

エピローグ

いかがでしたか?

今回は、災害に対する心の安全装置と危険を兼ね備えた「バイアス」について心理学の視点から色々とご紹介しました。

人は過去の経験を学習し、目の前の新たな問題に向き合い解決しようと取り組みます。

大きな災害を経験した被災地や被災者は、その教訓から多くのものを学び、後世へ伝承して同じ悲しみを繰り返さないように、大切な命を失わないように備えようとします。

ただ、これは裏を返せば、「幸運にも被害がなかった」という経験をすると、人は「今回も大丈夫」と楽観視して捉えがちであるとも言えるのです。

これほど危険で根拠のない安全神話はありません。

「ここは大丈夫」「自分は大丈夫」と信じたい気持ち、願いがどれだけ強くても、残念ながら自然災害を前にして「大丈夫」と100%言い切れる場所はこの地球上のどこにもありません。

本編冒頭でもご紹介したとおり、今年は大阪北部地震発生から5年を迎えましたが、実は、この2018年年は、非常に多くの自然災害で日本各地が被災地となりました。

2018年の主な自然災害

  • 2月「福井豪雪」記録的な大雪で数日間にわたり車が立ち往生
  • 6月「大阪北部地震」
  • 6月「西日本豪雨」広島を中心に200人を超える多くの命が奪われる
  • 9月「北海道胆振東部地震」離島を除く北海道内約295万で停電(ブラックアウト)発生
  • 9月「台風21号」大規模停電、関空の大規模浸水、関空連絡橋がタンカー衝突で破損
  • 9月「台風24号」全国55箇所で最大瞬間風速が観測史上最大を記録

今年も既に、5月5日に発生した能登半島での震度6強の地震以降、この地域に限らず、全国で震度5・震度6クラスの大きな揺れを観測し、5月末までわずか1ヶ月弱の期間だけでも、震度4以上の地震は実に17回も発生しています。

また、6月に入った途端、今度は台風2号・3号が立て続けに線状降水帯や梅雨前線による影響で、深刻な土砂災害を引き起こし、各地に大きな被害の爪痕を残していることは記憶に新しいことでしょう。

災害は絶えずあちこちで発生し、大切な命・生活・思い出を奪い、大きな悲しみを残していきます。

それでも「災害を防ぐことはできない」を前提に、少しでも「減災に努める」ことは、被害を語るとき「幸いにも」という言葉を使える場面を増やすことに繋がるはずです。

自然を相手にした時、人はどんなに防災に努めても完璧は存在せず、どうすることもできず、ただ目の前で穏やかな日常が奪われていく光景を立ち尽くし眺めることしかできないかもしれません。けれど、最も大切な命さえ守ることができれば、そこには必ず「明日」が待っています。

明日という未来を失わなければ「希望」を持つことはできるのです。

これから夏に向けて、台風や豪雨による水害や土砂災害はもちろん、水難事故も増える季節です。

河原でバーベキューをしている時に大雨に見舞われたら「同化性バイアス」の危険性をいち早く察知した人が、「同調性バイアス」の原理を利用して、どうか犠牲者が出ないようにするなど、これを機会に改めて防災・減災について考えてみてはいかがでしょうか?

防災のあたらしいカタチ提案

見える防災グッズ Vol.6

ー 明かり(ライト・懐中電灯)ー

防災グッズの必需品リストには必ず入っている懐中電灯。

夜間の災害で停電した時はもちろん、発生時刻がたとえ日中であったとしても被害状況によっては、長期間にわたって明かりが無い避難生活を強いられることも予想されます。

また、建物被害などが大きければ、人や物を探す際にも必要となるでしょう。

明かりは手元をピンポイントに照らしたり、辺り全体を広く照らしたり、光で遠くに合図を送ることができるもの。

災害時にどのように使うことを優先し想定するのか?

明るさ・サイズ・性能など、自分にとってどのような照明器具を備えておくべきかを考え選ぶようにしましょう。

明るさ

明るさは「光の量/単位はルーメン(lm)」で決まります。懐中電灯は一般的に、手作業用に手元・足元を照らすには45〜100lm、最大100先まで照らせる広範囲用であれば200lm以上がひとつの目安です。

サイズ

なるべく持ち運びしやすいコンパクトなものが理想的です。小さければスペースも取りませんが、一方で明るく照らせる範囲に限界がありますので、それらを総合的に考えて選びましょう。在宅避難用であれば、持ち運びよりもリビングなどの部屋を全体的に照らせる大きさのものを優先して考える方が良いかもしれません。

電源

乾電池式か充電式。

また充電式の場合は、充電方式がUSBケーブルのほか、手回しや太陽光などで電源を確保できるものなど色んな種類があります。電源確保の手段ひとつとっても、それぞれ一長一短ありますので、どのタイプが自分にとってベストであるかを考えるようにしましょう。

ペン型をはじめとする手で持つタイプのほか、安定して自立させることができたり、ヘッドライトタイプ、ネックレスタイプなど両手が自由に使えるタイプ、ランタンタイプで周囲を広く照らせるタイプなど種類は非常に豊富にありますので、使用用途を考え選ぶようにしましょう。

付加性能

クリップ・カナビラ・マグネットなどがついていて固定や身に着用できたり、防水機能・点滅機能やラジオ搭載がされていたり、明かりをズームイン・ズームアウトできるなど、プラスアルファの性能についても実に幅広くあります。

また、散歩やランニングの際に音楽を楽しめるハンズフリーのネックスピーカーにもライトが仕様されていて、日頃はもちろん災害時にも足元を照らす役割を果たせる製品などもあります。

いかがですか?

災害時をイメージする時、多くの方は「停電」という事態は安易に想定するかと思いますが、さらにもう一歩先のことを考えてみてください。

例えば、在宅避難用・持ち出し避難用・日頃から外出時に持ち歩く用・・・

「明かりを確保する為の防災グッズ」ひとつとっても、使用する場面や日頃の保管方法の違いによって、グッズ選びで優先すべきこともおのずと変わってくるのです。

また、これは他の防災グッズにも共通して言えることですが、できることならば「日頃から使える」ものであることが理想的です。
非常時は誰でも冷静さを欠いているもの。普段から使っていれさえすれば、いつものように正しく迅速にそのグッズを活用することができるでしょう。毎日ではなくても、よくアウトドアに行く方ならば、そういった用具と共通して使用できるものを選ぶこともポイントです。

さらに、それらの使い方について、工夫の仕方も日頃から考えておくことも大切です。

例えば、フックつきのランタンや懐中電灯ならば、ハンガーラックやカーテンレールに吊るし、高いところから明かりを照らすことも可能です。懐中電灯を安定を保って上方を照らせる場合、水分の入ったペットボトルなどを置くことで、光を乱反射させて即席のランタンにすることもできるでしょう。

防災グッズは、決して「買えば安心」「防災袋に入れたら完了」ではありません。

せっかく準備したそれらを、いざというときに最大限に活かした使い方、それを事前に想定し最低一度は試しておくことこそが、本当の意味での「防災」と言えるのではないでしょうか?

「防災キャンプ・ミニ」開催のお知らせ

枚方ビオルネでは昨年より、体験型防災イベント「防災キャンプ」をたびたび開催!

防災は、知識をただ頭に詰め込むのではなく、体験して経験にしておくことこそが本当の意味での防災です!

一度でも経験しておけば、非常事態で心にゆとりがなくても、「知っているだけ」より「経験したことがある」方が、少しは自信を持って、対応することも多いはず。

是非、防災キャンプに毎回参加することで、防災知識を体験し経験にアップグレードしませんか?

日時

 2023年6月25日(日) 11時00時〜16時00分

場所

 枚方ビオルネ 正面玄関前 (雨天/館内地下1F吹き抜け広場)

内容

(1)防災食&防災グッズ販売

まだ準備していないグッズはありませんか?ローリングストックは大丈夫ですか?

(2)AED体験

災害の場面だけでなく日常生活に潜む応急救命のためにもAEDの使い方を学びませんか?

(3)防災クイズラリー

館内に貼り出された防災クイズに答えてプレゼントをGET!

(4)ゆるキャラ防災ステージ

枚方の人気ゆるキャラ(みっけちゃん・くらわんこ・ひこぼしくん)と一緒に防災を学んでプレゼントをGET!

防災スタンプカードで目指せ!ビオルネ防災博士

「ビオルネ防災キャンプ」当日会場にて司令された防災体験3つをクリアしてプレゼントをGET!

【注意】いずれのプレゼントも数に限りがありますので予めご了承下さい。

 

筆者プロフィール

日経新聞まちかど人間録

筆者 プロフィール

石元 彩

西宮市の短大卒業時に阪神淡路大震災を経験し学生生活を突然打ち切られたまま社会人となる。

その後、1.17の震災を機に誕生したラジオ局「FMひらかた」に開局から閉局まで25年間携わり、後半11年間は東日本大震災の復興支援や情報を毎週発信するほか、常に社会に埋もれそうな小さな声やマイノリティの存在にスポットを当て、心に寄り添う言葉にこだわり番組を制作。ギャラクシー賞選奨2作品、奨励賞1作品受賞。


このコラムでは、これまで得た経験・知識・人脈、マスメディアの世界だからこそ触れられたもの全てを活かしながら、防災や災害、被災地の現状や被災者の声、さらには、その先に繋がる”生きるヒント”にもなり得るものを”見えないお守り”と称してさまざまな視点からお伝えできればと思います。

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